その場合、35年前から私が提案している道州制に移行せざるを得ない。全国を10の道州に再編し、それを選挙区にして各選挙区から10人ずつ選べば、衆議院議員は現在の465人から100人に削減できる。
選挙区の人口によって「1票の格差」が生じるので議員数を増減して是正してもよいが、そこはアメリカ連邦議会の上院と同じように割り切るべきだと思う。つまり「50州の権利は平等」だから議員の数は人口が少ない州も多い州も2人ずつで、「1票の格差」は関係ない、という考え方だ。
これはゴルフの「マスターズ・トーナメント」が開催されるコースとして有名なアメリカ・ジョージア州の「オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ」も同様だ。各州の会員はすべて2人ずつで、宿泊施設も4部屋のコテージが各州1棟ずつしかない。各道州を1選挙区とする場合も、同じ考え方をすればよいのである。
そして、国会議員は天下国家を論じられる政治家が100人もいれば十分だから、存在意義がない参議院は廃止して国会を一院制にする。実は、世界の議会は一院制のほうが多く、衆議院だけでも全く問題はない。
参議院の代わりになるのは「国民投票」だ。国家の将来や国民の安心・安全に大きく影響する法案については、最終的に国民がイエスかノーかを決めるのである。地方が抱える問題は道州議会で論じればよい。
こうした選挙制度・システムに一新して国会を抜本的に改革しなければ、日本の衰退は止まらないだろう。役人も議員の小粒化に伴い矮小化しているので、大選挙区の議員の成長に合わせて世界的な問題を論じられるようになることを願う。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点 2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号