税金を考えるうえでポイントになるのが「住民税」だ。とくに年金生活世帯にとってはこの税負担が重い。ファイナンシャルプランナーの柘植輝氏が語る。
「所得税の最低税率は5%ですが、住民税は所得にかかわらず一律10%です。収入が低い層ほど、所得税より住民税の負担が大きい。そこで、年金生活世帯などは少しでも収入を増やそうと考えるのではなく、年金だけで生活して住民税非課税を選ぶことで、かえって家計の負担が少なくなることが多い」
「税金を払わない豊かな老後生活」という選択だ。
「住民税非課税世帯には税制だけではなく、数々の優遇措置があります。国民健康保険や介護保険料がいちばん低い等級になり、社会保険料負担が非常に軽い。後期高齢者の窓口負担も1割でいいし、支払った医療費が戻る高額療養費制度でも得になる。
さらに給付金がもらえる。最近ではコロナ対策で住民税非課税世帯に1世帯10万円の臨時特別給付金が支給され、高騰する電気代やガス代の補填として国から1世帯5万円の緊急支援金が支給された。自治体独自の給付金もある。住民税非課税となる所得を1円でも超えると、こうした生活支援は受けられないこともある」
住民税非課税世帯かどうかで、家計への負担が天と地ほど違ってくるわけだ。
「住民税非課税世帯」となる所得の基準は自治体によって違う。東京など大都市部では、夫が65歳以上で妻の収入が国民年金のみの夫婦2人世帯なら、夫の年金収入が「211万円」以下、地方でも夫の年金収入「193万円」以下が住民税非課税世帯の目安だ。