年金繰り上げ受給で年金額を減らす選択も
厚労省のモデル年金は「元会社員の夫と、専業主婦の妻」の組み合わせで月額22万円(夫の厚生年金が約15.5万円、妻の国民年金が約6.5万円)とされている。こうしたモデル世帯なら夫の年金収入は年間約186万円で、他に収入がなければ住民税非課税の対象になる。
「年金が少ないから稼がないと」とパートなどで収入を得る場合も、税金や社会保険料負担を考えると、年金やパート収入を合わせた所得を「住民税非課税世帯」の範囲内に抑えたほうが逆に家計の手取りは多くなることが往々にしてあるのだ。
これから年金受給を迎える世代であれば、将来、完全リタイアして「年金生活」に入ることを考えながら年金の受給方法を選択していくのも一つの方法だ。
年金制度は2022年4月から、受給開始年齢を75歳まで繰り下げることができるようになった。
年金額は受給開始を65歳から1か月遅らせる(繰り下げ)ごとに割り増しされ、75歳受給を選択すると1.84倍の年金をもらえる。
「できるだけ長く年金受給を我慢して働き、退職後に割り増し年金をもらおう」という考え方もあるが、繰り下げを選ぶにしても、年金額が「住民税非課税世帯」の211万円の壁(大都市居住の場合)を超える前に受給開始するほうが、将来の社会保険料負担が軽くなる。
逆に、現役時代の給料が高く、65歳受給でも年金額が「住民税非課税」の基準を上回るなら、65歳になる前に年金をもらう「繰り上げ」を選ぶことで年金額を減らし、非課税の範囲内にする選択も可能だ。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号