日米「インフレ・金融政策・円安」の最新トレンド
このように、インフレ、金融政策、円安といった3つが、米国に対して日本株が優位であった要因と考えることができますが、残念ながら2022年12月にそれら全てが転換している可能性があります。
まずインフレについてです。日米のCPIの最新の推移に見ると、アメリカはすでにインフレがピークアウトしている傾向が読み取れます。一方、日本のCPIは現在も上昇が続き、インフレのピークはまだ見えていません。日銀のインフレ目標である2%を超えてもインフレ率の上昇が続いているだけに、物価高の影響から業績や景気への懸念が出始めています。
次に金融政策についてです。昨年12月に開催された米国のFOMC(連邦公開市場委員会)では利上げ幅が0.5%に縮小され、FOMCメンバーによる金利予想(ドットチャート)では2024年に「1%程度の利下げ」も想定されています。一方で、昨年12月に開催された日銀金融政策決定会合では、イールドカーブコントロールの許容変動幅が0.5%まで拡大されて長期金利が急上昇。日銀は金融引き締めではないと主張していますが、実質的には利上げや引き締めではないか、と市場で受け止められています。
最後に、円安についてです。米国のインフレピークアウトと日本の金融政策の変更、そしてここまで急激に進んだ円安ドル高の反動もあって、昨年12月末には、ピーク時から実に20円もの急激な円高が進行しました。12月14日に発表された日銀短観によれば、2022年度下期の想定為替レートは132.31円となっており、すでに1月3日現在のレート(130円台)が想定より円高になっています。直近の決算で見られたような、円安による輸出企業の業績押し上げ効果がなくなるどころか、企業によっては為替差損の懸念も出てきました。
ここまで見てきたように、インフレ、金融政策、円安の影響から日本株優位に動いていた状態が、2022年12月時点で全て転換しつつあります。結果として、2023年の株式市場は米国株に対して日本株の優位性が少ない状態で始まっているのではないでしょうか。米国の景気後退懸念も根深く残っており、年前半は日本株にとっても米国株にとっても厳しい状況が続くかもしれません。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnoteを日々更新中。