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中学受験を終えても重課金は続く…「私立中高一貫校は塾なしでいい」を信じて入学させた母親の計算違い

高校に入ると成績上位層ほど“重課金”

 高校に入ると、息子は英語の塾に行きたいといい出す。英語は成績がいいのになぜと問うとこう返ってきた。

「英語の授業が微妙なんだ。不安だから塾に通いたい」

 これもよくあるケースだ。中高一貫校であっても教師全員が名教師というわけではない。そのため、授業の質に疑問を持つと、生徒達は自主的に塾に行き始める。結果、高1の段階で、英語塾と個別指導塾(数学)に通い、月に5万円ほど塾代がかかる。

「高3になれば予備校の志望大学対策コースも受けます。そうなると月に10万円近くになると思います」とため息をついた。

 塾代は不要になるだろうという当初の目論見とは異なり、高1の段階で「塾なし」の6年間とはほど遠いところにきている。そして、勉強に追われずに6年間を過ごさせたいという希望も破れた。

「同級生で塾に行ってない子はほとんどいないと思いますよ。中学の頃と違うのは成績上位で東大や東工大を目指す子たちが“重課金”に陥っていることでしょうか。鉄緑会やSEG、駿台などの複数の塾に通って、個別指導塾も使っている子もいます」
 
 こういった中高一貫校の現状を中学受験生の保護者も知りつつあるので、説明会などでの質問も「塾に通う必要はありますか?」という曖昧なものから、「生徒の何割が塾に通っているかを教えてください」という具体的に数字を尋ねるものになっている。それだけ「塾なし」で済むことを保護者は強く希望している。

 皮肉なものである。保護者が面倒見を良くしろというから、学校は宿題や小テストを増やす。結果、それをこなせない生徒が出てきて、塾に通うことになっている。結果、保護者が願う「塾なし」とは違う状態になっている。

 今年の2月からの中学受験塾への新入生が減っているという話も聞く。実際、例年1月には多くの校舎が満員になる人気塾で、今年1月中旬段階では、まだひとつの校舎も埋まっていないという。「中学受験したほうが教育費のコストパフォーマンスが悪くなる」と判断する家庭が増えてくれば、受験生が減少していく可能性もある。30年も賃金が上がらないのに、教育費は増えていく。その中で、平均よりも世帯収入が多い家庭もそうそう中学受験に踏み出せなくなっていくのかもしれない。

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。2022年秋に発行の『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)は受験生の保護者以外も興味が持てる内容と評判の13冊目の単著。

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