「未来への投資」と謳う「異次元の少子化対策」を掲げ、岸田文雄・首相は“異次元の増税”に手をかけようとしている。現在、国の少子化関連予算は年約6兆1000億円。倍増させるというなら、新たに6兆円ものカネが必要になる。その財源として浮上しているのが消費税増税と「子育て連帯基金」だ。
「子育て連帯基金」とは、年金、医療保険、介護保険という「高齢者3経費」の財源(保険料)の一部を使って児童手当の基金をつくる構想だ。高齢者への老後の給付を減らして児童手当として配ろうというわかりやすい政策である。そして消費税率が引き上げられれば、最も生活が苦しくなるのは年金生活者に他ならない。
高齢者にツケを回す
少子化対策の受益者は子育て世代、負担者は高齢者になるが、高齢者世帯の家計にはそんな余裕はないのが現実だ。
年金支給額は今年4月から1.9%引き上げられ、夫が厚生年金、妻は国民年金の夫婦2人の年金モデル世帯では月額約4200円増えることになっている(夫婦とも68歳以上の世帯)。額面は増えるように見えるが、年金の増額幅が物価上昇より低く抑えられるため、実際の生活は苦しくなる。
保険料負担も増える。75歳以上が加入する医療保険(後期高齢者医療制度)は、昨年10月から年金など一定の収入がある人(対象者は約370万人)が病院や薬局で支払う窓口負担は1割から2割へと2倍に引き上げられたばかりだが、来年からはさらに保険料の上限が現在の66万円から80万円へと段階的に引き上げられる。
この保険料値上げは、政府が今年4月のこども家庭庁発足に合わせた目玉政策に打ち出した「出産育児一時金」の約10万円引き上げの財源にあてるためだ。