車の運転はまだまだやめたくない──これまで本誌・週刊ポストにそう語っていたサッカー界のレジェンド・釜本邦茂氏(78)がこのたび「免許返納」を決断し、実行に移した。どんな心境の変化があったのか。釜本氏の体験からは円満な免許返納のヒントが見えてきた。【前後編の前編】
ネット記事への思わぬ反響
2月2日、凍てつくような寒空の下、大阪市内のとある警察署に釜本邦茂氏(78)の姿があった。手には26歳の時に取得して以来、更新を繰り返してきた運転免許証が握りしめられている。
「返納しに来ました」
署内で書類を1枚書いて、捺印をする。返納手続きが終わると、どこかホッとした様子だった。
「あんだけ手放すのが嫌だったのに、あっけないというか、簡単なもんですわ。担当者が『釜本さん、返納ですか』と言うから『これで市内も騒がしくなくなるやろ』と返したら、笑っていました」
釜本氏はそう語りながら笑みを浮かべた──。
約8か月前、釜本氏は本誌・週刊ポストの『それでも私は「免許返納しない」シニアドライバーたちの言い分』(2022年6月3日号)と題した特集で、〈運転はまだまだやめたくない〉〈ハンドルを置く時期も自分で決めたい〉と免許返納に否定的な姿勢を見せていた。(*マネーポストWEB記事〈78歳の釜本邦茂氏が考える免許返納「ハンドルを置く時期は自分で決めたい」〉参照)
その記事には大きな反響が寄せられ、賛否両論が巻き起こった。「(返納すれば)市内も騒がしくなくなるやろ」とはそのことを指していたのだ。