セクシャルハラスメント、通称「セクハラ」問題が日本社会に浸透したのは、1990年代以降のこと。職場における男性から女性へのセクハラだけでなく、近年は就職活動中の「就活セクハラ」や、女性から男性への「逆セクハラ」なども可視化されつつある。そんななか、まだまだ声を上げづらいのが女性同士のセクハラ問題だ。
女性上司に意見言えないのは「職場の空気を壊したくないから」
職場で女性の上司からハラスメント的言動を受けていると語るのは、コンサルタント会社に勤める女性・Aさん(33歳)だ。
「昨年、今の会社に転職しました。入社して早々、職場の4つ年上の女性社員が、『A子ちゃんは彼氏いるの? もうそろそろ結婚相手見つけないとマズいよ?』『5年も彼氏いないの? 女として干からびちゃうじゃない!』などと、他の男性社員がいる前で大きな声で発言するのです。
恥ずかしいし、不快な思いをしているんですが、職場の空気を壊したくないし、この人にも嫌われたくないので笑ってごまかし、受け入れてしまうんです。悪気なく発言しているとしても、これがハラスメントになることを理解してほしい」(Aさん)
「相手はいないの?」おせっかい言動もハラスメントに
こうした女性同士のハラスメントについて、大学で人権問題教育を行なっている女性教員・Bさん(50代)はこのように話す。
「女性同士のハラスメントは、異性間のそれに比べ、問題化しづらいという特徴があります。たとえば、職場で『彼氏や旦那さんとセックスレスなの?』とか、『子どもはまだ作らないの?』といった明らかなハラスメント発言だけでなく、『結婚適齢期なんだから相手を探した方がいい』とか『いい男はいないの?』といったおせっかい発言も、ハラスメントに該当しうるものです。それが上の立場の人間が発するものであれば、パワハラにも抵触しうるものです。
そもそも、このような発言は、無意識のうちに相手を異性愛者であり、また恋愛感情や性的欲求があるという前提で“決めつけ”をしてしまっている点も問題です。なかにはアセクシャル(他人に性的欲求を抱かない指向や人)やアロマンティック(他人に恋愛感情を抱かない指向や人)の女性もいるわけですから、安易な決めつけが人を傷つけることもあります。
仕事を遂行するうえで不要な話題、とくに性的な話題に言及する必要がないのであれば、それは避けるべきです」(Bさん)