NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」(2016年)によれば、職場との往復の平均通勤時間は1時間19分。都市別で見ると東京圏が1時間42分と、突出して長い傾向にある。
日本の過酷な通勤事情は、海外のメディアでも紹介されるほどだが、一方で、わざわざ平均の倍近い時間をかけて遠距離通勤する人々も存在する。
保育園にも預けやすい子育て環境の良さ
神奈川県鎌倉市在住の30代男性・Aさんは、共働きの妻ともども2時間以上かけて都内に通勤している。毎朝7時、市内の保育園に娘を預けるのは夫であるAさんの仕事。夕方5時半前後にお迎えにあがるのは、妻の仕事だ。
世帯収入からすれば都内で生活することも可能なのに、なぜ、あえて長距離通勤を選んだのか。
「一番の決め手は、私の実家から近いことでした。子供が急病の時など、いざという時に親が面倒を見てくれる安心感があります。認可、不認可ともに保育園も多く、都内よりは預けやすい。妻はフレックス勤務で定時は午後3時までと、職場の理解があることも大きい。恵まれた環境だからこそ可能なことですが、長距離通勤のストレスは意外にも少ないです」(Aさん)
Aさんは、通勤に時間をかけることで、「かえって時間の使い方が有意義になった」と語る。
「確かに毎日往復4時間かかることで疲れは溜まりますが、考えようによっては、電車内の時間を有意義に使うこともできる。スマホひとつあればニュースやさまざまな情報をチェックし、メールも返信できる。周囲も私の家が遠いことを理解してくれているため、職場の飲み会も一次会で帰れることがほとんど。ダラダラと2次会、3次会に参加することもないので、都内で一人暮らしをしていた時よりも早く帰れているのではないかと思います」(Aさん)