時は金なり──貴重な時間を無駄にしてはいけないというあまりに有名な諺だが、現代人は“待つ”行為にどこまで価値を置いているのか? 電車の踏切を前にイライラしている人も少なくないかもしれない。
「列車が通過して、よし開くわと思ったのに、そこから2分くらい待たされて逆方向の列車が到着。そうこうしてるうちにまた次の列車が来ちゃって、結局3本、4~5分は待たされた。列車が通らない時は開けてくれればいいのに」
ここは都内某所。待ち合わせ場所に向かっているという54才の主婦は、なかなか開かない踏切を前にイライラ顔だ。
ある調査(2008年、『踏切での人間行動についての一考察』)によると、「踏切遮断中にもかかわらず、我慢しきれずに渡ってしまった人」の待てた時間は平均87秒だった。
鉄道ジャーナリスト・梅原淳さんによると、列車の本数や種類、時間にもよるが、1本の列車が通過するための踏切遮断時間の目安は、35秒だという。
「国土交通省は踏切遮断について『警報機が鳴り出してから遮断棹が下がり出すまでの時間は5秒以上10秒以下、警報機が鳴り出してから遮断棹が下がり切るまでの時間は15秒、遮断棹が下がり切ってから列車が到達するまでの時間は20秒』という基準を定めています。
ですが、この遮断棹が下り切ってから列車が到達するまでの20秒という時間は相当短く、線路の本数が多い踏切では、高齢者や体の不自由なかた、子供では渡り切れないケースもまま見られるのが実情です。それでも国土交通省が基準として定めているのは、いわゆる“開かずの踏切”を少しでもなくしたいと考えていることの表れでしょう」(梅原さん)