企業概要
ネットワンシステムズ(7518)は1988年に三菱商事とアンガマン・バス(UB)の合弁によって設立されたネットワークインテグレータです。
情報通信ネットワーク基盤やデータセンターにおけるクラウド基盤、そしてサイバーセキュリティシステムを大手民間企業から公共機関(地方自治体や、病院、教育機関など)、通信事業者などに提供しています。
ネットワーク基盤に加え、クラウド基盤およびセキュリティ基盤構築も含めたICT基盤構築関連の独立系企業では国内最大手として知られます。
事業セグメントは顧客市場別で表記されており、企業向け「エンタープライズ(ENT)市場」、「通信事業者(SP)市場」、自治体向け「パブリック(PUB)市場」、そして子会社のネットワンパートナーズによる「パートナー事業」に大別されています。売上構成を見ると、エンタープライズ市場30%、パブリック市場30%、パートナー21%、通信市場が19%となっています。
2012年頃までは、NTTグループを中心に通信事業者向けの売上が過半数を占めていましたが、2012年頃からインターネット設備整備一巡を背景に売上構成比を下げてきました。現在では通信市場は20%以下にまで比率が下がっています。
注目ポイント
足元の業績は好調。第1四半期は、一部コロナの影響がありましたが、好採算であるサービス事業の拡大に加え新事業の黒字化も寄与し、大幅営業増益を達成しました。
コロナの影響については、同社の場合、テレワーク案件の増加などポジティブ要素と、一部プロジェクトの遅れやヘルスケア領域での優先順位変更といったネガティブ要素が混在していますが、ネガティブ要素についてはいずれ調整されるところであり、通期では回復が見込まれます。
それより、足元ではコロナを背景としたテレワーク需要やそれに伴うセキュリティ対策需要、5G対応需要、そしてGIGAスクール構想(※)関連で需要が生まれており、同社の受注残高が順調に増加していることが注目されます。
【※GIGAスクール構想とは文部科学省が2019年12月に発表した小学校・中学校等の教育に対する取り組み。「児童生徒1人1台端末の整備」「校内通信ネットワークの整備」を掲げ、次世代型教育環境の整備を目的とする構想】
7月に受注した相模原市GIGAスクール構想案件では、10年間利用可能という長期間にわたるサブスクリプション契約となっており、今後もこのような案件増により、さらなる収益性向上が期待されます。
新規事業の立ち上げ(新会社設立)など、先行投資も行っていますが、事業好調とサービス売上の拡大によりキャッシュフロー創出力が高まっています。2020年3期には営業キャッシュフローは123億円と前期からほぼ倍増。投資費用を大きく上回る水準であることからフリーキャッシュフローも倍増しています。この資金創出力によって、現金等手元資金は350億に達し、自己資本比率は50.5%、有利子負債ゼロという盤石な財務基盤を構築しています。
こうした良好なファンダメンタルから、株価は上昇基調に乗っています。PERは30倍を超えていますが、特に問題とならない水準と思います。配当も実施しており、配当利回りは1%以上あります。配当性向は40%を目途としていることから、現在の足取りが維持あるいは上振れることで、増配の余地も残しています。購入を検討する場合は、50日線まで調整したところなどを狙うと良いかと思います。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。