夏の参議院選挙を圧勝で終えた自民党は、国政選挙のない“黄金の3年”を迎えることになる。自民党の支持母体は農協、漁協、医師会、経団連など、従来の“既得権者”であり、その主体は「ノイジー・マイノリティ」の寄せ集め集団とも言われる。“黄金の3年”では、そんな「ノイジー・マイノリティ」に配慮した政策が中心になるのではと危惧する声もあるが、はたして今の自民党に対抗できる勢力はあるのか。
経営コンサルタントの大前研一氏は、「その任を担うべきは、ナショナル・センター(中央労働団体)の『連合(日本労働組合総連合会)』しかない」と考えている。だが、現状の連合は、サラリーマンやパート、アルバイトといった給与所得者向けに具体的な政策を打ち出しているとは言い難い。そうした「サイレント・マジョリティ」のために連合が提起すべき政策について、大前氏が提言する。
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連合はサイレント・マジョリティのために、どのような政策を打ち出すべきなのか? 私が考える政策案21項目を提言したい。本来は憲法を改正して抜本的に取り組むべき問題(私自身は「創憲」論者)だが、改憲議論はまだ途上なので、とりあえずは税金を通じてやるしかないと思う。
具体的な方法は、サラリーマンなどの給与所得者にもノイジー・マイノリティと同じ「青色申告」を適用することだ。給与所得者は収入金額に応じて一定の所得控除しか認められていないが、青色申告はあらゆる経費を収入から差し引いた後の収益が課税対象になる。
たとえば、農家は種苗・肥料・農薬の購入費、農機具の購入費やリース代、トラクターやビニールハウスなどの燃料費、業務で使う軽トラックなどの車検費用や自動車関連税、作業用衣類の購入費、セミナーや研修への参加費・交通費、借り入れの支払利息などをすべて経費として計上できる。
あるいは、開業医であれば、医院の修繕目的の医療機器や備品の購入費(30万円以下)、業務を手伝う家族の給与、業務に関連する交際費・福利厚生費・会議費・旅費などが経費になる。
このように、ノイジー・マイノリティは税金で優遇されているわけで、これは極めて不公平である。給与所得者も同様の税制にすべきだ。順番に説明しよう。