ゴミ捨てをめぐって近隣トラブルに発展するケースもあるが、そこで問題となるのが“誰が捨てたゴミなのか”という問題だ。もしも、回収されなかったゴミ袋があったとして、そのゴミを捨てた人物を特定するために、ゴミ袋の中身を調べることは、問題ないのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
先日、近所の人から「回収されていないゴミ袋の中身を見たら、あなたの名前が書いてありました。ゴミはきちんと捨ててください」と注意されました。私が可燃ゴミの中に不燃ゴミを混ぜてしまったため、回収されなかったようなのです。それはたしかに私の不注意ですが、ゴミの中を漁って名前が特定されたことに腹が立ちました。これはプライバシー侵害には当たらないのでしょうか。(神奈川県・38才・会社員女性)
【回答】
ゴミ袋の中に封筒などがあって名前が記されていたりすれば、ゴミを出した人を特定できます。また、その袋に入っていたゴミの内容から、捨てた人の生活や仕事を推測できるかもしれません。ゴミを見れば、趣味・嗜好・性癖等に関する事柄、あるいは診断書や処方箋など身体状況に関する事柄がわかる可能性があるからです。ですから、普通の人ならゴミを調査されることに不安を感じるのは当然で、私生活の平穏を脅かされることになります。
ゴミからわかる私生活を他人に話すことは当然プライバシー侵害になりますが、本人の同意なく、ゴミ袋を調査すること自体もプライバシーへの介入といえます。
しかし、そうした調査がすべて違法になるかといえばそうでもありません。プライバシー侵害の成否は基本的にプライバシーを守る利益と、プライバシーに介入する必要性や正当性の兼ね合いで決まります。後者が前者を優越するときには、違法なプライバシー侵害にはならず、プライバシーの主体もこれを受忍しなければならないこともあるからです。
家庭ゴミの収集は、市区町村が廃棄物処理法に基づき処理計画を定めて行う行政上の義務で、住民もこれに協力する義務があります。処理計画で分別収集を定めていれば、これを遵守しなければならず、違反したゴミ袋が回集されないのはやむをえないことです。
いつもゴミ出しルールを守らない人がいて、残されたゴミが猫やカラスの標的となれば、散らかったゴミが近所に大変な迷惑を及ぼすことは言うまでもありません。ルール違反の常習者に注意することも必要になります。