厚生労働省が発表した2022年度の国民年金の納付率は、前年度から2.7ポイント上昇して80.7%となり、初めて80%を超えたという。その一方で、2019年に金融庁が公表した報告書によれば、「30年間の老後生活を送るためには、年金収入だけでは2000万円不足する」と指摘されたことは記憶に新しい。「老後2000万円問題」として話題になり、不安を感じた人も少なくないだろう。もっとも、老後資金として準備するべき金額は、資産状況や就労状況によって大きく異なる。また、何歳まで生きるかで、必要な生活資金も変わってくる。
では、年金受給が開始する65歳から95歳まで、30年間の老後生活を送っていくためには、どれほどの貯蓄や収入を準備しておく必要があるのか。統計データをもとに試算してみよう。
年金収入のみで生活するのは難しい
総務省が実施した2021年の調査によると、65歳以上の高齢世帯が生活する際の1ヶ月あたりの支出は夫婦2人で「25万5100円」、単身世帯で「14万4747円」とされている。
これらの支出をまずは年金収入だけでまかなうことができるのか、厚生労働省が公表している年金の平均受給額(月あたり)をもとに確認してみよう。
【夫婦】
国民年金のみの夫婦世帯:10万2676円
厚生年金に加入する共働き世帯:28万7930円
一方が厚生年金に加入する片働き世帯:19万5303円
【単身】
国民年金のみの単身世帯:5万1338円
厚生年金に加入する単身世帯:14万3965円
厚生年金に加入する共働き世帯であれば、年金収入だけで毎月の収支が黒字となるが、国民年金のみに加入する世帯や、片働き世帯は年金収入以外で生活費を補填しなければならない。また、国民年金のみに加入する単身世帯も約9万円の赤字となり、厚生年金に加入していたとしても月々の収支が若干の赤字になってしまう。
これらの状況から、年金収入だけで生計を立てていくことが難しく、自身で対策をしていかなければ生活が成り立たなくなってしまうことがわかる。