楽天グループには社債の償還期限が迫る。その額は2024年、2025年で総額8000億円に(時事通信フォト)
迫る「8000億円」の償還期限
ただ楽天グループにはもう一つの不安がある。資金繰りだ。参入当初、6000億円と見積もっていた設備投資は、すでに1兆円を超え、さらに膨らむ見通しだ。莫大な投資資金を捻出するため、楽天は凄まじいペースで社債を発行した。来年からはその償還期限が絶え間なく訪れる。その額は2024年、2025年で総額8000億円に上る。
KDDIとの新契約も、同社のプラチナバンド回線を引き続き使うことで、自社ネットワークの設備投資をペースダウンしたい、という思惑がある。
償還のピークを後ろ倒しにするため、社債の「借り換え」も検討しているが、そのためにはさらに契約者数を増やして金融市場の信頼を勝ち取る必要がある。株価も携帯事業に本格参入する前の半分以下に低迷しており、新株を発行する上でも投資家からの評価を高めなくてはならない。
楽天グループの試算ではモバイル事業を単月黒字にするためには800万件程度の契約者が必要になる。今のペースで増え続ければ「年内には600万件が見えてくる」(楽天関係者)というが、800万件はまだ遠い。
モバイル事業単独での黒字化が遅れれば、虎の子の「楽天カード」を上場して資金調達する必要に迫られるかもしれない。楽天モバイルの参入後、日本のスマホ料金は平均6400円から総務省の調査によると約2000円下がった。楽天モバイルユーザーだけでなく、多くの国民がその恩恵に浴したはずだが、1兆円のリスクを取った楽天・三木谷浩史の功績を認める声は多くない。
三木谷は何を考えて無謀とも思える携帯事業への参入を決断したのか。その先にどんな未来を思い描いているのか。その三木谷がなぜ日本では嫌われるのか――。詳しくは拙著『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』を読んでいただきたい。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞入社。日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。『流山がすごい』(新潮新書)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)など著書多数。最新刊『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)が8月31日に発売された。
※週刊ポスト2023年9月15・22日号