川辺謙一 鉄道の科学

JR2社が開発に取り組む「水素燃料の鉄道車両」の仕組み 燃料電池を搭載する「HYBARI」も話題

 小学校の理科の授業で、水素を燃やす実験をしたことはありませんか? 試験管の中で水素を発生させた後、火がついたマッチを入れると、水素が炎と大きな音を出して燃えるという実験です。

 これは、水素と、空気中の酸素が燃焼反応して水を生成するもので、次のような式で示すことができます。

水素と酸素の反応

水素と酸素の反応

 この反応で生成される物質は、人体や環境に無害な水だけ。石油や天然ガスなどの化石燃料を燃やすと、CO2(二酸化炭素)などの地球温暖化の原因とされる物質(温暖化効果ガス)が生成されますが、水素を燃やすときは、それが生成されません。

 もし、化石燃料の代わりに水素を燃料とする鉄道車両を造ることができれば、走行中に温暖化効果ガスを排出しません。だから「環境負荷の低減」につながるというわけです。冒頭で紹介した水素エンジンは、シリンダー内部で水素と酸素の燃焼反応が起きます。

発電する燃料電池

 いっぽう燃料電池も、水素と、空気中の酸素を反応させて水を生成します。ただし、内部で起こる反応は燃焼反応ではなく、電気化学反応で、炎や大きな音は発生しません。

 燃料電池は、内部で起こる電気化学反応を利用して発電する発電装置です。名前に「電池」と付いていますが、乾電池などの使い捨ての電池(一次電池)や、スマートフォンやノートパソコンの電源として使われる充電して繰り返し使える電池(二次電池)とは構造や性質が大きく異なります。

 燃料電池には、燃料極と空気極と呼ばれる電極があり、燃料極には水素、空気極には空気が流れる(拡散する)構造になっています。水素は、触媒層で水素イオンとなり、空気中の酸素と電気化学反応して水を生成します。つまり、水素と空気を供給し続ければ、水を排出しながら発電し続けるしくみになっているのです。

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