とはいえ、年金アップをめざしてやみくもに働くと思わぬ落とし穴が待っている。結婚以来、共働きを続けてきたDさん(58才)が寂しげにつぶやく。
「老後の幸せのため絶対にお金が必要だと信じ、出産後もすぐに職場復帰して働きました。でも育児に協力的ではない夫との溝が深まり、仕事が忙しかったせいで子供たちとの思い出もほとんどない。子供たちは大学卒業を機に全員家を出てひとり暮らしを始め、いまではほぼ顔を合わせることもありません。
年金がもらえる年齢になったら、夫との離婚も視野に入れています。月々30万円を超える年金を手にする予定ですが、それと引き換えに家族がバラバラになってしまった。何のために働いたのかわかりません」
年金を増やそうと無理して体を壊す本末転倒
プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは、年金が多いからといって天国とは限らないと話す。
「よく見られるのは、無理しすぎて体を壊す人。ストレスがたまって精神的に不安定になる人もいます。懸命に働いて年金は増えたものの、それよりも高額な医療費がかかってしまう本末転倒なケースすらあるのです」
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