都心では集合住宅が当たり前だが、気をつけたいのは騒音。深夜の楽器演奏や大声などは問題外だが、生活音が他の部屋に迷惑をかけることもある。何度か注意を促しても騒音が止まず、引っ越しという結論に至った場合、その引越し費用は誰が負担すべきなのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
賃貸マンションに住んでいますが、1年ほど前に引っ越してきた上階住人の足音がうるさくて困っています。これまで何回も注意をしており、そのたびに「これからは注意します。すみません」と言うのに、一向に改善しません。
このままでは精神的に参ってしまうので、その人に引っ越してもらうか、私が引っ越しをするしかないと思っていますが、引っ越し費用は誰が負担するのでしょうか。どちらが引っ越すにしても私は費用を払いたくありません。(42才女性・会社員)
【回答】
日常の生活行動や家庭内で利用される電気製品やピアノ、その他の音響製品などから発生する騒音は、生活する上で不可避ともいえ、一律に法律や条例で規制することになじみにくいものといえます。環境省によると、生活騒音などに関する配慮すべき指針が自治体ごとに設けられている程度です。
生活騒音は日常生活で必然的に発生するため、被害者になることもあれば加害者になることもありお互いさまで、がまんも求められます。とはいえ、受忍限度を超える過大な音によって平穏な生活ができないまでになると、人格権侵害の不法行為になり、その騒音行為の差し止めや発生した損害の賠償や精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。
受忍限度を超えているかどうかは、騒音原因の有用性・必要性、被害予防の容易性、被害の程度やその存続期間などの事情を考慮して、平均的な人の通常の感覚や感受性に基づき判断されます。