サウナブームと言われて久しい。サウナ愛好家(サウナー)の間で使われていたサウナで心身の調子が良くなる状態を指す「整う」という言葉も、一般的に広まりつつある。一方で、新型コロナ禍を経て、サウナから足が遠のいたという人たちもいるようだ。
一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の「日本のサウナ実態調査2023」では、「ライトサウナー(年に1回以上サウナに入る人)」、「ミドルサウナー(月に1回以上サウナに入る人)」「ヘビーサウナー(月に4回以上サウナに入る人)」と区分し、調査・推計した結果、サウナ愛好家の推定人数は新型コロナの感染拡大前だった2019年は約2824万人だったが、2021年は約1573万人にまで落ち込んだ。
2022年は約1681万人と前年比で約6.9%増したものの、コロナ禍前の水準と比べると約6割に留まる。かつて何度か足を運んだものの、最近はサウナに行かなくなった人たちは、どんな理由からなのか。リアルな本音を聞いた。
“我慢した自分”が偉いという気分を味わう
IT企業勤務の30代女性・Aさんは、サウナ好きの夫に「スッキリするよ」と誘われて何度かサウナに行ったが、「疲れるだけだった」と振り返る。
「熱い密室に入るのは、なかなかの拷問だなと思いました。それでも、やってみないとわからないものもあるかなと思ってチャレンジしましたが、“整う”というよりも我慢大会に近い。体に負担を強いている気しかしませんでした」
Aさんが夫に「整う」とはどんな感覚なのか尋ねると、『気分も体もがリセットされる』という答えが返ってきた。それを聞いたAさんは、「一度だけではわからなかったのかも」と再びサウナに足を運んでみた。
「入っている間に頭が朦朧としてしまい、3分も入っていられませんでした。立ち上がり、ドアを開けたところまでは覚えているのですが、その後一瞬記憶が飛び、気がつくと床に仰向けに倒れていました。
立ちくらみで倒れたようで、頭にはたんこぶが……。サウナの後なので、当然真っ裸。その姿をたくさんの人から心配そうに覗き込まれてしまい、痛いうえに恥ずかしくてたまりませんでした。それからサウナには怖くて一度も行っていません。
というか、私には“整う”の真逆で、“整わない”(笑)。もはや危険地帯です。もちろん入り方を工夫すれば危なくもないのでしょうけど、そこまでして入らなくていいなという結論です。
夫は、『サウナでは何も考えずに集中して汗をかけるのがいい』と言うので、ヨガとか瞑想に近い気分なのかなと理解しました。ただ、高温のサウナに限界まで入ったり、いきなり水風呂に飛び込むなど、我慢を重ねること=素晴らしいというものではないと思います」(Aさん)