楽天モバイル「契約700万件」が視野に
だがその後、NECは半導体事業などで韓国、台湾企業の後塵を拝し、NTTの下請けに先祖返りした。今回、楽天と組んでドイツに出るのは、同社にとって海外の通信分野で久々の挑戦になる。
バブル崩壊以来の「失われた30年」、世界市場で負け続け、リスクに怯える日本企業が、すっかり内向きになってしまった今、「世界初・日本発」の技術で世界市場に打って出る楽天の「蛮勇」は貴重ですらある。だからこそ、1企業の受注にも関わらず首相がお祝いのメッセージを送ったのだ。
日本では「経営危機説」の原因だった楽天モバイルの契約数が600万件を超えた。KDDIとの新たなローミング契約や、建物の中や地下でもつながりやすい「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯域の獲得などで利用者の期待感が高まり、加入は月間20万件のペースという。楽天モバイル単体での黒字化の目安となる700万件が視野に入ってきた。
ドイツで完全仮想化の商用化がうまくいけば、そのニュースは瞬時に世界を駆け巡る。半信半疑だった世界中の通信会社が完全仮想化に舵を切り、一日の長がある楽天には大きな商機が訪れる。
日本が生んだ最後の海賊・三木谷と、ドイツの森の街からヨーロッパの通信を変えようと目論むドマームース。二人の海賊が、世界の携帯市場に闘いを挑む。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞入社。日本経済新聞編集員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。『ファースト・ペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦』(日本経済新聞出版社)、『流山がすごい』(新潮新書)など著書多数。『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)が第43回「講談社本田靖春ノンフィクション賞」最終候補にノミネート。最新刊『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)が発売中。