相続トラブルを回避するために重要なのが、「遺言書」だ。故人が法的に有効な遺言書を残していれば、原則としてその通りに遺産が配分される。
それならば、子供たちが争わないように「遺産は均等に分ける」という遺言書を残せばいいと思うかもしれないが、そう簡単ではない。『トラブルの芽を摘む相続対策』の著者・吉澤諭氏(吉澤相続事務所代表)が言う。
「私のところに相談に来る方もよく“子供たちで等分してほしい”という話をされますが、そもそも均等に分けられるケースなどほぼありません。仮に遺産が現金だけなら等分にできますが、現実には不動産や株式、貴金属などがあって完全に均等にはできないものです」
さらに難しいのは、仮に遺言書で金額的に均等な分け方を指定できても、子供が不満に思うリスクが残ることだ。
「現金を等分したとしても、子供たちからは“私は親の介護をしたのに、何もしていない妹と同額なのか”とか“兄のところは子供が3人いて、いつもたくさん小遣いをもらっていた。子供がいない自分は一銭ももらっていない”とか、不平不満は様々なかたちで噴出します。生前の親とのかかわり方が違うから、等分でもトラブルは起きる。
私が相談を受ける時は、不満が出そうな要素をひとつずつ炙り出していきます。“預金を均等に分けても、生命保険の受取人は長女一人になっています”とか“あなたの介護施設の入居金を長男が出していましたよね”といった手順で懸念点を抽出します」(吉澤氏)