“古着っぽいもの”で満足する客層が増えた
古着の街として知られる東京・下北沢でも、個人経営の古着屋は厳しい経営状況にあるという。幅広い商品の買い付けを行っている古着屋オーナーの男性・Bさん(30代)は、激戦区“シモキタ”ゆえの悩みをこう語る。
「最近では超大手古着屋の進出が目立ちます。レギュラー品の数も桁違い。チャンピオンやリーバイスなどの人気商品の値付けも、圧倒的に安いです。古着初心者の大学生やカップル層はそういう店に足を運びますから、うちのような個人経営の店は分が悪い。
またコロナ禍以降の顕著な変化として、海外買い付けを行わず国内での買い付けと顧客からの買い取りで商品を揃えるような店も増えました。もともと古着好きだったわけではない人、とにかく低価格帯の服が欲しい若者層、“雰囲気だけ古着で良い”という人たちは、そういった店舗に足を運びます。彼ら/彼女たちは、ユニクロやGUだけでは満足できない、他者と差別化したいという気持ちで“古着っぽいもの”を求める傾向があります」(Bさん)。
そうした傾向は、下北沢の古着屋に来る客層にも変化をもたらしているという。Bさんが続ける。
「結局、個人経営の古着屋が仕入れに力を入れたぐらいでは、価格競争で勝てなくなってしまう。そうなると、古着の街・シモキタですら、大手以外では“安かろう悪かろう”な店が増えていく。当然のことですが、目利き力がある顧客は、だんだんシモキタに来なくなっていると思いますね。古着ブームとはいえ、経営サイドとしては悲しい変化と言わざるをえません」(同前)
一時期よりも親しみやすいものとなった古着。ファストファッションの低価格帯の商品に、古着を合わせるというファッションスタイルも珍しくなくなった。だが、古着ブームが拡大しているにもかかわらず、大手の参入と円安の逆風で、個人経営の古着屋は苦戦を強いられているようだ。