住まい・不動産

富裕層向けの賃貸マンションやホテルコンドミニアムが好調の陰でマンション専業デベロッパーが苦境 不動産価格の高騰が業者をも苦しめるカラクリ

不動産価格は高騰を続け、都内ではファミリータイプの賃料も上昇している(写真:イメージマート)

不動産価格は高騰を続け、都内ではファミリータイプの賃料も上昇している(写真:イメージマート)

 2010年代、アベノミクスで上昇を続けた不動産価格は、コロナ禍でさらに上昇。不動産経済研究所によると、2023年に東京23区で発売された物件の平均価格は1億1483万円と1億円を超えている。さらに賃貸でも高級物件が増加し、富裕層でのニーズが増えているという。『なぜマンションは高騰しているのか』が話題の不動産事業プロデューサー・牧野知弘氏が解説する。

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 マンション価格の高騰は、新築物件や中古物件に限りません。都内の賃貸マンションの賃料も上がり続けています。「日経ヴェリタス」(2023年7月31日付)によれば、都内の高額賃貸マンションマーケットは、コロナ禍の影響を脱して、好調モードに入っています。

 高額賃貸マンションと言うと、以前は、欧米など外国人の日本駐在用の物件がほとんどでした。私が勤務していたボストンコンサルティンググループでも、外国人駐在者は東京の代々木などにあった高額賃貸マンションに住み、家賃は月額100万円程度でした。こうした物件を豊富に扱うのはケン・コーポレーションなど、少数の業者に限られていました。マーケットがきわめて小さかったからです。

 ところが最近では、日本人を対象にした高額賃貸マンションが増えています。借り手はたとえば、企業オーナーです。彼らは非常に忙しいため、都内に自宅を所有して管理するのは面倒です。そのため、平日は六本木や渋谷近くの賃貸マンションで過ごし、休日は箱根(神奈川県)や軽井沢(長野県)などに構えた自宅で過ごす2拠点居住です。私はけっして彼らのような金持ちではありませんが、自宅は神奈川県の湘南エリアに所有し、普段は都内の賃貸マンションで生活しています。生活の効率性を重視した結果です。

 また最近、上場企業などで役員を自社近くに住まわせて、コンプライアンスや役員の安全確保を徹底する動きも、こうした高額賃貸マンション需要を後押ししています。さらに、自宅を保有せずに、投資マンションなどの不動産の収益で、都内の高額賃貸マンションを借りる人もいます。

 こうしたニーズを掴もうと、最近では住友不動産が、「ラ・トゥール」という高額賃貸マンションブランドを打ち出しました。そのなかの「ラ・トゥール新宿ファースト」は住戸面積110平米で月額賃料70万円、300平米のペントハウスでは300万円を超えます。顧客は外資系法人の駐在者だけではなく、医師や企業オーナーなどの日本人も多いようです。同様に、NTT都市開発も「ウェリスアーバン品川タワー」を手がけています。

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