見つけにくい施工ミスの具体例
さくら事務所では、建物の欠陥や劣化状況を調査し、改修すべき箇所などについてアドバイスするホームインスペクションを手掛けていますが、新築マンションの内覧会に同行すると、施工段階でのミスも意外とよく見つかります。具体例を挙げましょう。
わりと多いのは、浴室の天井裏にある換気扇ダクトの接合部分に不具合がある事例。湿った空気が漏れてしまうため、放置するとカビの繁殖につながります。
またエアコンを設置する際には外壁に穴を開けて管を通しますが、雨が降ったときにそこから水が室内に流れ込まないよう、外側に傾けて設置する必要があります。ところが、これが室内側に傾いて設置されている事例も時折見かけます。これらの施工ミスは一般の人が自力で見つけるのはなかなか大変ですが、よくあるトラブルなので覚えておいて損はありません。
内覧会では、自動火災報知器やスプリンクラー、ベランダの避難はしごといった、防災設備についても説明を受けるでしょう。こうした設備は定期的に点検が行われるので、家具などで隠してしまわないように注意が必要です。点検のときに困るだけでなく、実際に火災などが発生した際、防災設備がうまく作動しないと命にかかわる恐れもあるので、内覧会での説明はきちんと聞いておきましょう。
ベランダは専有部ではなく、専有使用権のある共用部です。火災などで避難を余儀なくされた場合、ベランダは避難経路となるため、隣の住戸との隔て板は、すぐ蹴破れるように簡素な作りになっています。
隔て板の前など、ベランダに私物をたくさん置くのはNG。避難上邪魔にならない簡易的なテーブルと椅子くらいなら問題ないこともありますが、部屋に入りきらないアウトドア用品などをぎっちり並べる、といった行為は避けましょう。ベランダガーデニングを楽しんでいる人も多いですが、管理規約によっては鉢植えの置き方や使い方次第で管理規約違反になる恐れがあるので注意してください。
引渡しを受ける時点では建物が完成を迎えていると思わないという観点が実は重要です。引渡し後、人が住み始めることで温湿度等を含めた室内環境が変化して発生する初期不良が出てきます。
これらの不具合が発生することを見越して2年間以上の保証がつけられていることが一般的ですので、その保証を活用して初期不良を補修してもらうことも大事です。引渡し後2年間をかけて本当の意味で建物は完成していくと考えましょう。
※長嶋修・著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ):1976年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。1999年、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」創業。著作に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』など多数。最新刊は『マンションバブル41の落とし穴』。