「今日こそ」と思ってやりたかったことをまた先延ばしにしてしまった――。そんな経験をお持ちの人は少なくないだろう。なぜ先延ばししてしまうのか。どうすれば先延ばしグセを克服できるのか。著書『すぐやる脳』が話題の脳神経外科医の菅原道仁氏が解説する。
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過度のストレスは先延ばしグセを招く
イギリス・シェフィールド大学のフスキア・シロワ教授は2015年、イギリスの医学誌『Journal of Behavioral Medicine』で次のような指摘をしています。
「先延ばしをする傾向がある人は、自分の判断や行動が、将来的にどんな影響を及ぼすかを理解する力が弱い。自分の将来のことを抽象的かつ他人事ごとのようにとらえ、自分の将来像に対して感情的なつながりをもたない」
また、その状態を「一時的な近視眼性」(temporal myopia)と名付けてもいます。
さらに、その原因として「将来の心配より、目前にある心配事に目を向けざるをえないほどの強いストレス状態に置かれていること」を挙げています。
この事実は、非常に示唆に富んでいます。噛み砕いて言うと、心配や不安などが強く、ネガティブな感情にさらされているときは、先延ばしをしやすくなるということ。
この説には、体感的に共感できる気がしませんか。先延ばしをせず「こまめにやる、早めにやる」ためには、ストレスをうまく逃がすことが大きなポイントになります。はいえ、外的な要因でストレスの渦中にある人が、それをうまくかわすことはなかなか難しいもの。ストレスを少しでも軽減できるよう、心がけてみてください。
「先延ばしをしないためには、感情のコントロールが効果的」という説も、多くあります。当たり前の話ですが、心配や不安などといった感情は、「こまめにやる、早めにやる」という姿勢を阻害しがちなのです。