まずはパソコンから最適化していく
どうすれば、先延ばしグセを克服できるのか。「こまめにやる、早めにやる」人になれるのか。
推奨したいのは「身近なところから、暮らしを改良していく」という手です。地道な努力に見えるかもしれませんが、脳に余計な負担を強いることなく、行動を確実に変えることができます。
たとえば、よくある問題のひとつに「余計なネットサーフィンをするクセを改めたい」というものがあります。
「業務上、ネット検索(SNS活動)が必要」というわけではないのに、なんとなくダラダラとネットを見てしまうという人は多いはず。私たちの生活を飛躍的に便利に楽しくしてくれたはずのネットが、先延ばしグセの一因となっているわけです。
もちろん、一部の研究者たちはこのような時代の流れを敏感にキャッチしています。前回に紹介したピアーズ・スティール教授の研究チームは、ソフトウェア開発企業と協力して「先延ばしグセ」に対処するための研究を行ってきたことでも知られています。たとえば、北京に拠点を置く企業セイント(Saent)と共同で、“本業”のパソコン作業から脱線しない仕組みが盛り込まれたソフトウェアを開発した実績もあります。
セイントの製品は、日本でもネット通販で手に入れることができます。その製品とは、ひとことで言うと生産性を上げるためのデバイス。デスク上に置いたデバイスに触れると、設定した作業時間(30分、50分、90分)の間は、SNSなどを使えなくなります。つまりバーチャルな監禁状態になるというわけです。“監禁”が解けるとデバイスが光り、元の状態に戻ります。
セイントは、「オンライン上でマルチタスクを効率的にこなせるのは、ネットユーザーのわずか3%程度」としています。圧倒的大多数が、本業と関係のないサイトをフラフラうろつき、大事なことを先延ばしする「タスク・スイッチャー」だというわけです。
このようなソフトやデバイスなどの力を借り、自分のパソコン環境を「こまめにやる、早めにやる」仕様に最適化していくことは、非常に有益です。
※『すぐやる脳』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成
【プロフィール】
菅原道仁(すがわら・みちひと)/脳神経外科医。1970年生まれ。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患を専門として国立国際医療研究センターに勤務。2000年、救急から在宅まで一貫した医療を提供できる医療システムの構築を目指し、脳神経外科専門の八王子市・北原国際病院に15年間勤務し、日々緊急対応に明け暮れる。その後、2015年6月に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)、2019年10月に菅原クリニック 東京脳ドック(港区・赤坂)を開院。著書に『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)、『成功する人は心配性』(かんき出版)、『成功の食事法』(ポプラ社)などがある。