【浜岡原発】(1~2号機は廃炉決定、3~5号機は運転停止中)
南海トラフ地震で「最大25.2メートル」の津波が発生する可能性が想定される浜岡原発。
東日本大震災以後、1~5号機全炉が停止されているが、中部電力は3~4号機の再稼働を原子力規制庁に申請中だ。
「浜岡は審査に通っていないので安全設備が壊れない保証はありません。ただし、停止して10年以上経つので、核燃料はプールで冷却されています。福島第一原発事故のように、核燃料が高温となり、セシウムが放出されるようなリスクは考え難いです。(地震発生時も)核燃料プールの水位を確認し、減っていれば水を注ぐ対応でよいので、時間的余裕は相当ある。とはいえ訓練はしっかりしておくことです」(山形氏)
再稼働しておらず、比較的低リスクとの指摘だ。
【伊方原発】(1~2号機は廃炉作業中、3号機は定期点検のため運転停止中)
「想定震源域」内で稼働中の唯一の原発だ。今年7月から3号機は定期点検で停止中だが、9月末には送電開始の見込みだ。
4月に四国で起きた最大震度6弱(伊方町は震度4)の地震の際、四国電力は3号機で加熱器タンクの弁の不調を発表したが、「安全性に問題はない」と運転を継続した。
南海トラフ地震では伊方町の津波が最大21.3メートルに達すると想定されるが、山形氏によれば佐田岬半島の瀬戸内海側に立地するためリスクは比較的小さいという。
「佐田岬が巨大な自然防潮堤となっており、南海トラフでの津波は大きく周りこむ。伊方原発に届く時は1~2mで、新基準に照らして問題がないことは審査で確認済みです。ただ、ほかと同様にCクラスの設備で故障はあるかもしれません」
【川内原発】(1号機は定期検査中で8月末からフル出力発電、2号機は稼働中)
国の指定する「南海トラフ地震防災対策推進地域」の薩摩川内市に立地するのが川内原発だ。今回の日向灘地震で「震度4」だったが、トラブルはなく、停止していない。
南海トラフ地震の津波をまともに受ける太平洋側ではなく東シナ海に面しており、津波は最大約6メートルと想定される。対する原子炉は13メートルの高台、冷却用の海水ポンプなど重要施設も高さ15メートルの壁や防潮堤で囲われており、新基準をパスして全国で最初に再稼働が認められた。
「許可済みの川内は伊方と同様に南海トラフ地震による津波は想定内で、安全設備が影響を受けません」(山形氏)
なお、東海第二原発(茨城県)も南海トラフ地震の防災対策推進地域に含まれるが、東海村の想定被害は最大震度4、津波高3mと相対的に小さく、2011年以降は停止中だ。
地震発生時の原発に関する情報発信にも改善が求められる
防災対策推進地域の範囲内にある稼働中あるいは再開予定の原発については、各電力会社への取材結果を図中に記した。
能登半島地震では、志賀原発をめぐる北陸電力の発表が訂正を繰り返した。地震発生時の原発に関する情報発信にも改善が求められている。
「原子炉の安全と関係がない変圧器で火災が起こったり、少量の放射性物質が漏れたりすることはあるかもしれませんが、これらは科学的、技術的には対応可能で許容範囲内なのです。しかし、それが大事のように扱われ、パニックになることもあります。そうならないために、政府や電力会社は包み隠さず情報を提供し、国民から信頼されることが必須です。信頼がなければ、情報も信用してもらえません」(山形氏)
情報と信頼が、正しく怖がるための基礎になる。
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号