マーケットアナリストの平野憲一氏(ケイ・アセット代表)はこう言う。
「備蓄のあるコメは比較的安心ですが、輸入に頼る肉や魚は小売店から消える懸念がある。南海トラフの防災対策推進地域(※注)には茨城から沖縄まで広範囲が含まれ、令和4年の全国開港別貿易額トップ3の成田空港、東京、名古屋の港や、鶏肉加工品の輸入において10年以上全国1位のシェアを占める川崎港などに被災のリスクがある。
【※注/南海トラフ地震が発生した場合に著しい地震災害(震度6弱以上や、海岸堤防が低い地域での津波高3m以上など)が生じる可能性があるため、地震防災対策を推進する必要があると内閣府が指定する地域】
そうなると、博多港や仙台港など、被災を免れ、かつ大型船が入港可能な港まで遠回りせざるを得ない。交通網が寸断されれば食材の流通に不安が生じます。食卓に欠かせない冷凍食品や缶詰など加工品も輸入食材に頼っており、同様の懸念があります」
交通網が回復しても、十分な供給がなされるまでには時間がかかると考えられ、食料品価格の急騰なども起こり得る。
株価もマンションも「半値」になるリスク
株価も大打撃を受ける。
東日本大震災後は日経平均が2割近く下落したが、前出・平野氏は南海トラフ地震での下落幅はさらに大きくなるとみる。
「被害が広範囲に及ぶため、企業活動へのダメージは東日本大震災の時より深刻になる。外国人の日本株の保有割合が31.8%と高まっている点も重要。短期的な利益を重視する外国人が南海トラフ地震で被害を受けた日本企業を見て、復興を待たずに売りに転じると、影響は非常に大きい。日経平均2万円の水準までの暴落も考えられます」