目玉となる屋外展示場
「イノトランス」の目玉は、世界各国から鉄道車両が集結する屋外展示場です。通常は顔を合わせるはずがない鉄道車両が、ここでは一堂に会しているため、マスメディアはこの様子をよく報道しています。
興味深いのは、人を運ぶ旅客車だけでなく、物を運ぶ貨物車や、機関車、そして保線用機械も置かれていることです。私が行ったときは、保線用機械のデモンストレーションが行われており、多くの部品が動いて保線作業を行うという、通常はなかなか見ることができない光景を間近で見ることができました。
バスの実物も走る
屋外展示場には、線路がないエリアもあり、そこでバスが展示されています。「イノトランス」は、じつは鉄道だけでなく、バスをふくむ公共交通の展示会なのです。そのためか、「イノトランス」のロゴは、線路と道路が交差する様子がデザインされています。
私が訪れたときは、広い芝生の周りを周回する道路にEVバスが静かに走っていました。また、電車のようにパンタグラフを上げて電気を取り込み、バッテリーを充電するEVバスも展示されていました。
鉄道の未来を語る国際会議場
「イノトランス」の屋内には国際会議場があり、そこで講演やシンポジウムが行われます。先ほど紹介した屋外展示場とくらべると地味ですが、鉄道の未来を語る話を聴くことができます。使われる言語はドイツ語または英語で、ドイツ語の場合は英語の翻訳が聴けるレシーバーが聴講者に渡されます。
私は実際に聴講して、「鉄道業界にデジタル世代の若者をいかに呼び込むか」という講演がとくに印象に残りました。ドイツでは、大学でAI(人工知能)やIT(情報技術)を学んだ人は、多くが自動車業界に入ってしまい、鉄道業界にはなかなか来てくれない。これではデジタル技術による鉄道運営の効率化が進まない。どうすればいいか? これはドイツに限らず、自動車産業を基幹産業とする日本にも共通する悩みでしょう。