政策論争としてだけでなく、玉木氏の主張がきっかけで選挙後に財務省を中傷するSNS投稿が殺到──という、主張自体が害を招いているとの印象を与える報道も見られた。なかにはコメント数が選挙前後で約20倍以上に急増したなど、やけに数字が詳細に報じられているものもある。
政治ジャーナリスト・長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)はこう語る。
「玉木氏は103万円の壁の引き上げだけでなく、実質賃金が上がるまで消費税を5%に下げるべきだと言っているし、教育国債を年5兆円程度発行して(医療保険料に上乗せして徴収される)子育て支援金は廃止だと主張している。再エネ賦課金徴収を停止して電気代を値下げするとも言った。特に玉木氏は財務官僚出身ですから、官僚たちからすれば“裏切りやがって”と受け止め、“絶対につぶせ”という話になる。
そうなった時の財務省は様々なアプローチを取れる。出先である地方の税務署長は各地の経済人とのつながりで常日頃から地元の国会議員に関するネタを集めており、今の状況で玉木氏の情報を探っているのは間違いないでしょう」
“玉木つぶし”の動きでは、知事会も強硬な反対の声を上げている。
全国知事会の会長を務める村井嘉浩・宮城県知事は、“玉木減税”を実施すれば同県では810億円の減収となり、「たちどころに財政破綻するだろう」と語り、「私が総理の立場なら首を縦に振らない」と反対を表明。
さらに経済界からも新浪剛史・経済同友会代表幹事が「7兆円は相当厳しい話だ」と税収減の問題を厳しく指摘した。
「知事会や経済界に根回しして税収が減ると危機感を煽り、減税に反対させるのは官僚の常套手段です。地方創生を掲げる石破茂・首相は、知事会が反対すれば玉木氏の要求を飲みにくくなる。外堀を埋めようとしている」(前出・全国紙記者)
自民党が減税を阻止したいのは、公共事業費などの削減に手をつけられたくないからだ。