「岸田文雄・前首相は定額減税と非課税世帯への給付で5兆円くらい使ったし、石破総理もこの臨時国会で能登の震災復興や国民の生活支援などで13兆円規模以上の補正予算を組む方針だ。これは1回だけの支出だから財務省は認める。
だが、玉木氏の主張する103万円の壁を引き上げる減税をやれば、毎年7兆円以上の税収が失われる。毎年国債を増発するわけにはいかないから、公共事業費や補助金を削ることになる。各省は既に来年度予算の概算要求を提出しているが、財務省は各役所や与党議員に『減税と財源問題が決着するまでは予算が組めない』と触れ回っている」(自民党政調関係者)
財務省は自民党、霞が関、知事会、経済界が総出となる「減税つぶし」包囲網を敷いているのだ。
さらに、財務省は国民にも矛先を向けた。
自民党と国民民主党の103万円の壁をめぐる協議が始まった11月8日、厚労省が厚生年金加入の収入要件である「年収106万円の壁」の廃止を検討していることが一斉に報じられた。年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。
「夫が会社員で、妻がパートなどで働いている場合、現在は妻が週20時間以上勤務しても、月収8万8000円(年収約106万円)未満であれば第3号被保険者となって厚生年金に加入しなくていい。給与から年金保険料が取られることはありません。しかし、今回浮上した収入要件の撤廃が実施されると、週20時間以上働いたら厚生年金に加入させられ、給料から厚生年金保険料と健康保険料を天引きされるようになります」
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年11月29日号