約500億円を出資して、KADOKAWAの筆頭株主となったソニー。営業利益の約6割をゲーム、音楽、映画で稼いでいるソニーにとって、KADOKAWAが持つアニメを中心としたコンテンツは重要なものとなるのは間違いない。「エレキの会社」から「エンタメの会社」となったソニーの足跡について、ジャーナリスト・大西康之氏がレポートする。【全3回の第3回。全文を読む】
今が正念場
「はじめの一歩」は1989年、創業者の盛田昭夫会長(当時)が決断したコロンビア・ピクチャーズの買収だろう。
実はこの時、創業者のスティーブ・ジョブズを放逐したアップルが低迷しており、ソニーに「買わないか」と打診があった。それでも盛田氏は「アップルのような会社はいつでも買えるが、映画会社は今買わないと、二度と買えない」とコロンビアを選んだ。
しかし、米国で業界最下位の映画会社は、湯水のように金を使う不良プロデューサーの巣窟で、出井伸之氏、ハワード・ストリンガー氏ら歴代社長はその立て直しに多くの時間を奪われた。映画事業がようやくものになったのは『スパイダーマン』がヒットした2002年であり、10年以上かかったことになる。
ソニーを「エンタメの会社」にしたのは、ゲーム事業を手がけるソニー・コンピュータエンタテインメントから2012年にソニー本体の社長になった平井一夫氏と、参謀役を務めた現会長兼CEOの吉田憲一郎氏とされる。
その吉田氏は、こう振り返る。
「今のソニーになるための種は20世紀に植えられていた」