ソニーが世界のレコード市場で20%のシェアを握っていた米CBSと、合弁会社の「CBS・ソニーレコード」を設立したのは1968年。この合弁会社の設立20周年を祝う式典で、当時社長の盛田昭夫氏はこう語っている。
「ソフトの発達により、新しいハードウエアも初めて人の役に立つのです。どうか、この次の30周年を祝う時には、音だけでなく映像も含めた、もっと大きな、もっと幅広いソフトウエアビジネスを確立していってほしいと思います」
どんな優れたハードもソフトがなければただの箱。盛田氏はそのことを誰よりもよく知っていた。企業文化も異なるKADOKAWAの買収はコロンビアのように手こずるかもしれない。だが、リスクを取らなければ戦う土俵にすら立てない。
今、世界の映像ビジネスを牛耳っているのはハリウッドの映画会社ではなく、ネットフリックスとウォルト・ディズニーだ。時価総額で言えば、それぞれ約60兆円と30兆円で、20兆円に届いたばかりのソニーとはまだ大きな開きがある。
日本が得意とするゲーム、アニメを起爆剤に世界のエンタメ・プラットフォームに突き抜けられるか。今が正念場である。
■全文公開:【ソニー帝国の野望】KADOKAWAのコンテンツを“弾”に世界市場を狙う “エレキの会社からエンタメの会社へ”20年で大きく変わった「稼ぎ方」を完全レポート
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。ベストセラー『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(新潮文庫)が文庫化されて発売中。
※週刊ポスト2025年1月3・10日号