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河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

【令和の日本列島改造】10年前に初代担当相を務めた石破茂・首相が捲土重来を期す「地方創生」、これまで成果が出なかった“3つの失敗要因”

第2の失敗──「東京一極集中」批判の不毛

 第2の失敗は、東京一極集中の是正に過度に期待し、「移住促進」の旗を振ったことだ。

 むろん、災害大国である日本において1つのエリアに極端に多くの人が集中することはリスクが大きい。生活上のさまざまなトラブルも生じさせている東京の超過密ぶりは、改善が必要だ。だが、東京一極集中の是正を地方創生の政策として位置づけることには無理があった。国民を強制移住させられるわけではないためだ。

 そもそも、地方自治体間で人口を引っ張り合うことは不毛である。手厚すぎる子育て支援策を展開して子育て世帯の移住者が増えている地方自治体が成功事例のように取り上げられることがあるが、移住者の奪い合いはコップの中の水の争いだ。日本全体の人口が激減するという根本的な問題が解決しないので、一時的に人口が増える時期があっても長続きはしない。

 成果を急いだ地方創生本部は、地方分散に取り組んでいることをアピールするため、東京23区内の大学の定員増(新設含む)を原則禁じたり、文化庁や消費者庁の一部を京都などに移転させたりもしたが、あまりに小規模な政策に本気度が感じられず、東京一極集中是正の動きが広がるはずもなかった。

 それ以前の問題として、「東京」対「地方」の対立軸はファクトに基づかないずれた問題設定であった。地方からの人口流入は、東京一極集中の大きな要因ではなくなってきているのである。23年の東京都の人口が増えた要因を分析すると、実に94.4%は外国人人口の増加によるものだ。東京への転入者が少なくないことは事実だが、同時に転出者も多い。

 しかも、東京都への転入者の多くは大阪市や名古屋市などの大都市からの流入である。小規模県の知事などが声高に東京一極集中を批判しているが、過疎が進む地方自治体から東京に流出している人の数はそれほど大きな数字ではない。

 コップの中の水の奪い合いは早くも曲がり角に差し掛かっている。東京都の推計によれば、都の人口も30年にピークを迎え減少に転じるというのだ。

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