「環境マウンティング」という価値基準
さらに、「マウント競争」からの解放を象徴する存在としても際立っている。アップルウォッチが従来の腕時計が象徴していた「ステータス競争」を超越したように、高級車同士が繰り広げる「優越性の争い」を次元の異なる価値観で凌駕している。
「環境を守りながら革新的な選択をする」という理念を体現することで、他の高級車では得られない独自の満足感を提供しているのだ。
テスラが提供するのは、「未来世代に対する責任」を果たしながら、「未来を所有し、育むライフスタイル」を具現化するという新たな価値観そのものである。環境配慮と革新を核に据えたこの提案は、「環境マウンティング」という価値基準を打ち立て、「所有」という概念そのものを根本から再定義している。
進化を続けるその姿勢と先進的な価値提案は、既存の枠組みに収まらず、他を圧倒する存在感を放っている。今後も、環境への配慮と革新を見事に融合させ、新しい所有体験を提供することで、未来のライフスタイルを牽引する象徴的なブランドとして、さらなる地位を確立していくだろう。
【プロフィール】
勝木健太(かつき・けんた)/1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経て、経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたって国内大手消費財メーカー向けに新規事業・デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、2019年6月に株式会社And Technologiesを創業。2021年12月に株式会社みらいワークス(東証グロース:6563)に会社売却(M&A)し、執行役員・リード獲得DX事業部 部長に就任。2年間の任期満了後、退任。執筆協力実績として『未来市場 2019-2028』(日経BP社)『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績として『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)がある。