閉じる ×
ライフ

地方で引きこもる当事者たちが語る“今の生活から抜け出せない”事情 「働き口の選択肢が少ない」「周囲に噂が出回っている」「土地持ちの実家に助けられた」

一度引きこもると「外に出るのが怖くなる」という人は多い(イメージ)

一度引きこもると「外に出るのが怖くなる」という人は多い(イメージ)

 東京一極集中が着実に進んでいる。総務省「住民基本台帳人口移動報告(2024年)」によると、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過が13万5843人となった。東京だけなら7万9285人の転入超過で、いずれも3年連続で前年を上回ったという。しかしその裏では、地方で“引きこもる”人たちもいる。

 引きこもりが社会問題となって久しい。内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(2022年度)」によると、引きこもり状態になったことがある人は15~64歳で50人に1人。引きこもりになった理由は「退職」や「人間関係」などがあるが、地方で引きこもると「なかなかその生活から脱出できない」という声もある。当事者たちの話からうかがえる“地方ならではの事情”とは――。

予想以上に居心地がよかった実家

 岡山県在住のAさん(30男性)は、岡山大学を卒業後、ひとり暮らしをしながら岡山市内で働いていた。しかし職場や賃金への不満から退職。一旦実家に戻ったところ、無職のまま2年が過ぎたという。

「転職先を決めるわけでもなく、先に会社を辞めたので、生活費の面から実家に戻ったんです。実家は県内でも田舎の方で、広島寄り。実家の親は文句を言うこともなく、むしろ『ゆっくりしていきなさいね』とあたたかく迎えてくれました」(Aさん)

 実家では朝昼晩と食事にありつけるばかりか、家賃もかからない。両親との関係も良好なため、転職活動への熱は徐々に冷め、ずるずると家に居座り続ける日々を過ごすようになった。

「親からは『早く出て行きなさい』とか、『働け』と言われると思っていましたが、そんなこともなく……。久しぶりの実家は予想以上に居心地がよくて、昼夜のメリハリが無い生活が続き、ほぼ引きこもり状態です。親は『今まで頑張っていたから少しは休みが必要』と言ってくれるので、それに甘えてますね」(前同)

「ネットがあれば、買い物も娯楽も完結するので、引きこもりにはなりやすい」というAさん。「特に地方民は一度引きこもると出られない」という。なぜか。

「高校卒業や大学卒業のタイミングで地方を脱出しないと、もう外に出るのが怖くなるというか。しかも、田舎過ぎて働き口の選択肢は少ないし、遊びに行くところもない。わざわざ外に出て遊ぶよりは、延々ネットで動画を見たりゲームをしたりすればそれでいいわけで……。かつ、外で遊ぶとお金もかかりますが、家のなかだと課金の無駄遣いをしない限り、お金も使わない。引きこもりのできあがりです」

次のページ:噂が出回っている雰囲気を感じる
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。