さらに日本は、少子高齢化というきわめて深刻な構造問題を抱えています。出生数を見れば、将来の人口動態はほぼ正確に予測できます。20年後に20歳になる日本人の人口は、現在の0歳児の数を超えることは絶対にあり得ません。減っていく人口や労働力を補うには移民が有効ですが、日本は移民の受け入れに消極的です。
日本と対照的なのがアメリカです。世界中から優秀な人材を集める積極的な移民政策が経済成長の大きな原動力となっています。実際、MicrosoftやGoogleといった、世界を代表する巨大IT企業のCEOはいずれもインド系移民です。白人の人口比率は低下傾向にありますが、先進国にしては珍しく人口も増加中。経済成長率は先進国の中でも群を抜いています。
少子高齢化が進み、移民の受け入れも難しい。そうやって人口や労働力、生産年齢人口が減少し続ける日本のGDP(国内総生産)が今後、大きく成長することはかなり難しいと言わざるを得ないでしょう。
かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、その圧倒的な競争力で世界市場を席巻した日本企業も、いまや当時の勢いはありません。
日本企業が世界経済に与える影響力は格段に低下し、以前のように「脅威」として見られることもなくなりました。今、アメリカをはじめとする西側諸国が最も「脅威」と感じているのは間違いなく中国です。
こういった背景を考慮すると、「日本市場」全体を“買い”だと判断することは難しい。日経平均株価に連動するインデックスファンドなどは、長期的な資産形成の手段として心もとないと言わざるを得ません。
日本企業とは対照的なアメリカ企業のダイナミズム
アメリカ市場と比べたとき、日本市場への投資に強い確信を持てない、もうひとつの理由があります。それが「経営スタイル」の違いです。
多くのアメリカ企業は、徹底した効率性と合理性を追求します。実は数年前から、アメリカでは「鍵屋」が、急速に姿を消しつつあります。かつては鍵屋の店主が、その場で合鍵を複製してくれるのが当たり前の光景でした。しかし最近では大型ショッピングモールやホームセンターの一角などに、「鍵の自動複製機」が設置されているのです。そこで簡単に、そして安価に、合鍵を複製できるようになっています。
ちなみに、機械に対応していない特殊な形状の鍵の場合、一大事になります。人の手、つまり専門の技術を持った鍵職人に対応してもらわないといけません。しかし効率化の波によって、昔ながらの鍵職人の多くはすでに廃業してしまっています。急な鍵のトラブルに見舞われた際に、途方に暮れてしまうケースも出てきているのです。
アメリカの企業は「人件費を削減できれば、そのぶん利益率が向上する。ならば、より安価な機械に置き換えよう」と合理的な判断をすみやかに下します。一部の人にとっては不便になるかもしれませんが、それくらいドラスティックに合理化や効率化を断行するのです。
アメリカの雇用スタイルは一見すると非常にドライで、冷徹な印象を与えるかもしれません。しかし人件費を抑えることで高い利益率を確保し、それを従業員の給与アップにつなげるのです。
また、雇用の流動性が高いため、業績不振によってリストラされても、別の成長企業や景気の良い業界へと比較的容易に転職することができます。ある企業が4000人をリストラしたとしても、その4000人全員が路頭に迷うわけではないのです。
こうしたダイナミズムこそが、アメリカ経済の強靭な競争力やイノベーションにつながっています。そしてアメリカ株式市場を全体として押し上げてきました。
対照的に日本は終身雇用や年功序列といった、日本特有の雇用慣行がいまだに根強く残っています。