吊掛駆動とカルダン駆動
駆動装置には、おもに吊掛駆動とカルダン駆動があります。「吊掛電車」では吊掛駆動、近年よく使われる電車ではカルダン駆動を採用しています。双方には「ばね下重量(ばねから下の部品の総重量)が異なる」などのちがいがあります。ただ、それらをすべて説明すると長くなるので、今回は構造と振動の伝わり方のちがいに絞って説明します。
駆動装置のおもな種類。筆者作図
吊掛駆動では、主電動機を台車枠(台車のメインフレーム)と車軸に吊り掛ける構造になっています。わざわざ車軸に吊り掛けるのは、車軸と主電動機の回転軸の距離を一定に保ち、歯車が噛み合いやすくするためです。
この方式には、弱点があります。その代表例は、走行中に発生する振動や衝撃が、車軸から主電動機を介して台車枠に伝わりやすいことです。「吊掛電車」に乗ると、独特な振動や音を感じるのは、このためです。
いっぽうカルダン駆動では、主電動機が台車枠のみに固定されています。吊掛駆動とくらべると、走行中に発生する振動や衝撃が台車枠に伝わりにくく、車体での乗り心地がよくなるのが大きな特長です。このため、日本で現在使われている電車のほとんどは、カルダン駆動を採用しています。
課題があった吊掛駆動
それでは、吊掛駆動の駆動装置をくわしく見て行きましょう。下の図は、吊掛駆動の駆動装置を立体的に描いたものです。斜めから見ると、主電動機の一部が車軸の上に載っているのがわかりやすいでしょう。
吊掛駆動の構造。オレンジ色は主電動機。筆者作図。
次に、実物を見てみましょう。下の写真は、吊掛駆動を採用した台車です。先ほどの図とは構造が若干異なりますが、主電動機(白く塗られた機器)が車軸の上に載っている点は同じです。なお、この台車では、構造をわかりやすくするため、車軸部分のカバーを外しています。
吊掛駆動を採用した台車。ニューヨーク交通博物館にて、筆者撮影
以上紹介した吊掛駆動は、1880年代にアメリカで開発されました。これは、従来の駆動装置よりも車軸に大きな動力を伝えることができるため、電気機関車や、主電動機で駆動するディーゼル機関車で現在も使われています。ただし、車体に伝わる振動が大きいなどの課題があるため、人を運ぶ電車では、徐々に使われなくなりました。