5月12日、95才で亡くなった名女優・京マチ子さんが出演した大映配給の映画『女系家族』(1963年、原作・山崎豊子)。大阪・船場の名門木綿問屋の社長の死後、身重の愛人と3人の娘の間で壮絶な遺産相続争いが起きるというストーリーで、京さんは権謀術数の限りを尽くす、欲の深い社長長女役を好演した。
「相続の骨肉の争い」はしばしば小説やドラマのテーマになってきたが、現実と違うのは、「資産が多いから“争続”になるわけではない」ということ。実際には、1000万~2000万円程度の遺産の方が争いに発展しやすい。
そもそも、なぜ揉めるのか。前出の『女系家族』で描かれたように、親(社長)が亡くなるまで相続財産の全貌と相続人の情報が秘密にされていたから、死後に「知らなかった!」と遺族が揉めるケースが多いのだ。相続コンサルタントの曽根恵子さんが話す。
「一にも二にも、まずやらなければいけないのは、財産の全容を把握すること。相続で揉める最大の要因は、家族が生前に財産の有無をしっかり把握、情報共有できていないことです」
三菱UFJ信託銀行が昨年行った調査では、相続を検討している人の半数以上が、「(子供に対して)相続財産を全く明らかにしていない」、6割以上が「子供と相続の話をしたことがない」と回答した。
「財産の全容を把握するのは本人でさえ大変で、死後に家族が行うのはさらに大変な作業になります。生前に対策を講じておくことが大切です」(曽根さん)
自分には関係ない、まだ時間はあると思っていたら、いざ老親が亡くなった時に大変な目に遭ったり、親族と争いに発展する可能性もある。