現役の正社員、定年後のパートタイマーや再雇用者など、多くの人の「働き方」に影響を及ぼすのが、4月から施行される「パートタイム・有期雇用労働法」(中小企業への適用は2021年4月から)だ。
正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくし、同一労働同一賃金を目的に定められた法律とされるが、一方で正社員がこれまで受けていた各種の「手当」を削られる恐れがあるとの指摘もある。社会保険労務士の稲毛由佳氏が解説する。
「非正規雇用の待遇を上げるのではなく、正社員の待遇を下げることで格差是正を図る企業も出てくると予測されます。すでに家族手当や住宅手当の縮小を始めている企業があり、その分、正社員の手取り給与は減っている。同じように、正社員向けの福利厚生制度も多くの会社で削減される見込みです」
定年後、勤務先に再雇用で残ったり再就職したりした場合も影響する。
「リタイア後、再就職や再雇用で勤務日数を減らし、のんびり働きたいというニーズは叶えられなくなる可能性がある。同一労働同一賃金対策をやるよりも、パートや契約社員を全て正社員とし、かつ、定年も引き上げる会社が増えれば、フルタイムと同様の勤務形態だけが残ります。そうした動きがすでに出始めています」(稲毛氏)
「もっと働かないなら辞めてください」
安定した収入が確保できる半面、これまでの働き方や稼ぎ方を変えなくてはならないケースも出てくる。
2019年4月に大企業で始まった「残業規制(時間外労働の上限規制)」は、2020年4月から中小企業にも適用される。残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間までと定められている。