一見“家計の味方”となった日米貿易協定は、2017年のトランプ大統領就任とアメリカのTPP離脱に伴い、日米間で結ばれた二国間貿易協定だ。TPP加盟外となったアメリカは関税率が高いまま据え置かれたため、日本国内では加盟国のオーストラリア産やカナダ産より高くなり、アメリカ産牛肉の輸入量が減少していた。
これを苦々しく思ったのがトランプ大統領だ。彼の大票田であるテキサス州は米国内でも最大の農場数・農場面積を誇る農業地帯。特に牛肉の生産地として知られており、日本への輸出拡大は彼の支持層へのアピールにもなる。そこでトランプ氏は日本へ貿易協定の締結を強く迫った。
「うろたえたのが、安倍政権でした。トランプ大統領側は“条件をのまないなら日本からの自動車の輸入に25%の追加関税をかける”と脅しにかかり、安倍首相はさっさと白旗を掲げてしまった。ロシアや北朝鮮などとの外交が失敗続きの安倍首相は、“シンゾーはトモダチ”と言ってくれるトランプ大統領のご機嫌を取り続けるしかないんです」(政治ジャーナリスト)
「肥育ホルモン剤」で牛の成長を早める
そうして「安倍-トランプ密約」によりアメリカ産牛肉の輸入量は増大した。家計を預かる主婦としては牛肉が安く買えるようになるのであれば、どんな経緯があったとしても歓迎したいところなのだが、話はそう単純ではない。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが指摘する。
「アメリカ産牛肉が安く買えるようになって喜んでいる人も多いかもしれません。メディア報道でも『輸入品に押された日本の生産者にとっては苦境だけれど、消費者にとってはお得』というような形で伝えられていますが、実はそんな簡単な話ではない。食品の自由化は消費者の問題であり、何より、私たちの健康、ひいては生命の問題にかかわってくるのです」
なんとアメリカ産牛肉には、とんでもない危険が潜んでいる可能性があるというのだ。