世界最大の農業国は中国である。2018年における農業セクターの名目GDPを見ると、トップの中国は1兆208億ドル(109兆7398億円、1ドル=107.5円で計算、以下同)、2位はインドで4058億ドル(43兆6277億円)、3位はアメリカで1665億ドル(17兆899億円)となっている(国連、グローバルリンクまとめ、以下同)。名目GDPに占める農業セクターの割合では中国は7.5%であるのに対して、アメリカは0.8%に留まっている。
14億人の人口を抱える中国にとって、農業は重要な産業であるが、実のところ、その生産性は高くない。2018年における第二次産業(鉱工業・製造業・建設業など)の労働生産性は17万1108元(国家統計局、258万3737円、1元=円で計算、以下同)、第三次産業(金融、保険、卸売り、小売、サービス業、情報通信業など)は13万662元(197万3003円)であったが、第一次産業(農業・林業・水産業)は3万1955元(48万2517円)で格段に低い。
この労働生産性の格差が農村から都市へと若者が出ていく現象を引き起こしている。こうした農民工と呼ばれる労働者が中国の都市化を支えている面もあるが、しかし、最近では農民工の供給源が縮小、農村の過疎化、農民の高齢化が進んでいる。働き手不足などを含め三農(農村、農業、農民)問題は中国にとって解決すべき喫緊の課題である。
農業規模を拡大すると同時に、農業の近代化を進めることがポイントであるが、IT技術の発展に伴い、農業生産性が大きく高まる可能性が出てきた。中国国務院は“インターネット+(プラス)”による新たな需要拡大を進めているが、アリババはこれに応える形で、農村部深くに従業員を送り込み、インターネットを活用した事業開拓を支援している。
農産物の販売ルートは卸売業者が中間に入り、彼らが小売に卸すのが主流だが、ここ数年、この分野でも、アリババなどの業者が中に入る形で、EC取引が活発となり、直接小売店、あるいは消費者に販売する動きも目立ち始めた。
SNSを使って、商品の写真や、栽培の状況を記録した映像を充実させ、日々更新するなど、見せる側の工夫を凝らした上で、インフルエンサーがインターネット上で紹介するというスタイルの流通が増えている。政府による鉄道、道路などのインフラ投資や、トラックの品質向上、EC業者による積極的なロジスティックの強化などが背景にある。中間の流通段階を無くすことによるコスト削減効果は大きく、農作物のネットショッピング市場は成長期を迎えつつある。