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リアル半沢直樹の世界 東電、東芝の危機に政府介入の思惑

枝野幸男経産相(右)と面談する東京電力の西沢俊夫社長ら(写真は2012年2月撮影、時事通信フォト)

枝野幸男経産相(右)と面談する東京電力の西沢俊夫社長ら(写真は2012年2月撮影、時事通信フォト)

 ところが、賠償費や廃炉・汚染水対策費はどんどん膨れあがり、政府から原賠機構への拠出金も増え、東電の経営は迷走を続けた。2012年6月に東電の株主総会で国から1兆円の出資を受けることが決まり、東電は実質的に国有化された。

「その間は政権も混乱しており、自民党政権に戻っても先送りの状態は変わらない。国有化の先のイメージも固まっていない状態です」(同前)

 経営難に陥った企業の子会社売却先の選定を、政府が事実上担ったケースもある。2015年に、長年にわたる会計不正が発覚した東芝は、歴代3社長が引責辞任。その余波が収まらない2016年12月にはアメリカの原発事業での巨額損失が発覚し、経営危機に陥っていた。

 再建のため、東芝は基軸事業である半導体部門を切り離して東芝メモリを設立し、売却先を探した。当初、引受先として日本企業は名乗りを挙げず、台湾・鴻海らのグループが有力視されていたが、そこへ政府から横やりが入ったとされる。

 経産省をはじめ日本政府は、東芝の半導体技術が中国と関係の深い鴻海に渡ることを懸念していた。加えて東芝は米ウエスタンデジタル(WD)と半導体の共同生産をしており、東芝が半導体事業を手放すとWDの経営にも影響が及ぶため、米系企業に売るのが望ましいとも指摘されていた。

 そうして最終的に、東芝メモリは政府の意向に沿った形で、米ファンドのベインキャピタルを軸とする日米韓の企業コンソーシアムに2兆円で売却されて決着した。

※週刊ポスト2020年10月2日号

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