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認知症母の「終の住処」探し 決め手となった「お風呂に入る“自由”」

入浴が週に2回と聞いて母の顔が曇った

 立地や費用で折り合いのつく有料老人ホームとサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を絞り込み、母を連れて見学に行った。なかでも、私の自宅のすぐ近くの老人ホームは有力候補だった。施設長の女性が元気いっぱいで明るくて、母もつられて笑顔を見せた。

「こちらが浴場。手すりやスロープも完璧!快適です」と館内の説明も熱心。ただ、入浴が週に2回と聞いて母の顔が一気に曇った。母は新聞を読みながらゆっくり風呂につかるのが日課だったのだ。

「まあ、お風呂好きですか!じゃあ私の権限で特別に3回もOK。ケアの観点からは週2回で充分なんですけどね」と、施設長さんは満面の笑み。「ケアの観点」。なるほど、老人ホームは基本、生活そのものが介護の場なのだ。同じ日にサ高住を見に行くと、居室にあるユニットバスを見つけた母は、中まで入ってうれしそうに言った。

「あら、きれいないいお風呂ね。この部屋がいいわ!」

 こうして即決したサ高住が母のいまの住処だ。入浴をはじめ、基本的な生活は自由。服薬や掃除、洗濯など忘れる作業だけをヘルパーさんに手伝ってもらい、食事は食堂にお任せ。絶妙な支え具合が母も心地よいようだ。

 あれから6年。母は入浴を忘れることが多くなった。週2回、ヘルパーさんに促してもらうようになり、支えが必要な場面が着実に増えている。3軒目の終の住処を考慮せねばならない時期かもしれない。

※女性セブン2020年12月3日号

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