ホルモン剤の残留制限上限を設けているが検査は実質野放し
「じゃあ、アメリカ産の牛肉だけ食べなければいいのね」と思った人もいるだろう。だが残念なことに、アメリカだけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、日本に牛肉を輸出する主だった国々は、ほぼすべてが肉牛への肥育ホルモン剤の使用を認めている。
東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが話す。
「農業大国であるオーストラリアは、EU向けにホルモン剤不使用の牛肉をつくっている一方で、ホルモン剤を使って大量生産した肉は日本に輸出している。アメリカでも同様に、EU向けと日本向けを区別しています。
さらに不幸なことに、日本では海外から輸入された肉にはWHOの基準に準じたホルモン剤の残留上限を設けているものの、その検査は実質、ほとんど野放し。農林水産省に確認したところ、この状況を認めました。つまり、日本は世界の牧場が“ホルモン入り肉”を押しつける格好の標的になっているのです」
現在、日本の牛肉輸入シェアはオーストラリアとアメリカが肉薄しており、2国を合計すると9割近くに達する。
輸入牛肉の中にも、日本の大手スーパーマーケットなどが現地の契約牧場で厳重な管理のもと飼育しているものもある。こうした一部の商品を除き、「輸入牛肉はホルモン入り」といっていい状況なのだ。
実際、牛肉を使った商品を提供する大手外食チェーンはコスト面から多くがアメリカ産牛肉を使用しており、輸入時の検査が不充分であることから、ほとんどの企業が、自分たちの使っているアメリカ産牛肉が“ホルモン牛”かどうかを把握すること自体が困難だ。
※女性セブン2021年3月25日