父や母が高齢になってくると、さまざまなトラブルの種が生まれる。だが、親子で事前に情報を共有し、書類や資料を用意しておくことで、問題を回避できる。夢相続代表で相続実務士の曽根恵子氏は「どのタイミングで、どんな準備をするかが重要」だと強調する。
「たとえば介護保険については、親が元気なうちは手続きは必要ありません。ですが、相続については親の判断能力がしっかりしているうちにできるだけ準備しておく必要があります。
まずは、親に不動産の固定資産税納付書、預金通帳などを確認してもらいながら、財産目録を作成していきます。子供たちにとって一番面倒なのは、親の死後、どこにどれだけ財産があるかわからないケースです。財産目録には、預貯金の金融機関名や口座番号、株など有価証券があるなら証券会社の口座情報まで正確に記入する。
借入金があれば金額だけでなく内容も記載してもらうと、財産の全体像が把握できて、相続税がかかりそうかの判断もつきます。仮に負債のほうが多ければ、相続放棄を視野に入れることもできる。親が70代になったくらいのタイミングで、目録の作成を始めるのがよいでしょう」(曽根氏)
そのうえで、遺言書を作成する。相続人が誰なのかを確認するために家系図を準備し、財産目録で一覧にした資産を誰がどう相続するか、親子で話し合いながらまとめていくのが基本となる。
「注意すべきは親の一番大きな財産が自宅の場合です。自宅は分けにくい財産であるため、相続人のうちの誰かが親の死後も住み続けるのか、売却して現金を分割するのかなど、家族で話し合って決めておくようにすれば遺産分割トラブルを避けられます」(曽根氏)