創業150年の歴史を誇る“世界最大の企業グループ”の名に傷を付ける騒動となった。三菱電機の鉄道車両向け空調装置で、35年以上にわたる不正検査の実態が発覚。杉山武史社長は「組織的な不正行為」と認め、辞任の意向を表明した。
これは単に一企業の問題では片付けられない。『経済界』編集局長の関慎夫氏は言う。
「旧財閥系のなかで三菱ほど企業間の繋がりが強いグループはありません。特に三菱電機はグループのシンボルである“スリーダイヤ”を商品に使用しているため、『組織の三菱』のイメージダウンは避けられない」
関係者が注目しているのが、「金曜会」の動向だ。
金曜会とは、三菱グループの中核企業26社の会長・社長が集まる月に1度の定例会。毎月第2金曜日に東京・丸の内にある三菱商事本社ビルで開かれている。表向きは親睦会だが、額面通りに受け取る人は少ない。
「金曜会の主な役割は、ブランドイメージを守ることです。2004年の三菱自動車のリコール問題の際は、“御三家”と呼ばれる三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行が中心となって莫大な資金援助を行ないました」(同前)
『三菱財閥 最強の秘密』(宝島社新書)の著者でジャーナリストの田中幾太郎氏が語る。
「三菱電機が恐れているのは金曜会の人事への介入でしょう。杉山社長は辞任会見で『後任にふさわしい人材は三菱電機内にいる』と話していました。しかし、三菱自動車の時は三菱商事の役員だった益子修氏が常務として送り込まれ、翌年社長に就任した。今回も相当なスキャンダルですから、他社から人事介入を受ける可能性がある」