“安さのしわ寄せ”は少なくない
今後の牛丼チェーンにとっては、すき家のように牛丼以外のメニューを充実させていくことも重要になっていきそうだ。小浦氏が予測する。
「原材料の高騰は今後も続きそうで、牛丼のさらなる値上げもあり得る状況ですが、そもそも牛丼が300円台で食べられることが“すごいこと”とも言えるでしょう。2000年代初頭に200円代後半まで値下がりした牛丼は、まさにデフレの象徴。海外からの安い原材料を調達し、人件費をカットすることで、安い価格を実現していたわけですが、その副作用的に“ワンオペ問題”などが取り沙汰されることもありました。つまり、“安さのしわ寄せ”は少なくなかったんです。
そしてコロナの影響で世の中も様変わりし、原材料費や原油価格が高騰するのはもちろんのこと、最低時給もアップして、人件費を大きく削減することもできなくなっています。今後も安い価格を保とうとするなら、何かしらの悪影響が色濃く出てしまうはず。牛丼の値上げは、単純に時代に合った価格に変わっているだけだと言えます。
それでも、安い価格に慣れた消費者にとって、牛丼の値上がりをショックに感じてしまうのは仕方ないこと。そういう意味では、牛丼以外のメニューの充実化やトッピングでのバリューアップは、今後の顧客満足度を高める意味で有効な手段となりうるでしょう」
コロナ禍を経て“適正価格”に回帰する牛丼チェーン。安さを売りにする時代はもう終わりつつあるのかもしれない。