家計

食べ放題で「元を取りたい」と思う心理 “サンクコスト効果”が失敗を招く

橋本さん:コロナ禍になる前、「マイレージ」に関してそういう話をよく聞きました。「ランクを上げるためには、○月までにあと2000マイル必要だ」と大枚はたいて無理矢理シンガポールに行った友人がいましたが、まさに「これまで貯めたマイルをムダにしてなるものか」というサンクコストの精神ですよ。

オバ記者:エステもそうよね。最初に30万円の回数券を買って、そのチケットがなくなるタイミングで「ここまでがんばったから、もう1回契約しましょう」って。

橋本さん:少しでも効果を感じていたら、支払い済みの30万円がもったいなく感じて、さらにつぎ込んじゃう。男性でいえば、キャバクラ通いも似たようなもの。お目当てのコにやっと名前を覚えてもらった頃、忙しくて店に行けなくなったら、「つぎ込んだお金がもったいなかったなぁ」とえらく自己嫌悪してしまう。えっ、私の経験じゃありませんよ(笑い)。そんな経験、オバ記者さんにもありますか?

オバ記者:そうね……結婚かな。バツイチの私は最初、失敗したってなかなか認められなかったのよね。いまでこそ、「はずみで結婚した」とか、「下の名前が広子だから、野原って名字と相性がよかったから」とか言って笑い話にしているけど、結婚って人生の一大事だから、当然、それなりに考えて決めたわけだよね。それだけに、(ちょっと違ったな)と心で思っても、簡単には気持ちの整理がつかないわけよ。

橋本さん:なるほど。

オバ記者:それとギャンブル。冷静に考えれば、いくらか損しただけなんだけど、その金額以上に損したような気持ちになっちゃう。大きな決心をしたり、長い時間を費やしたり、大金を使うと、なかなか引き返せない。

橋本さん:そうですね。

オバ記者:(失敗したな)って思ったとき、ヘタにジタバタしない方がいいのね。

橋本さん:その通りです。

第3回につづく)

【プロフィール】
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。

「オバ記者」こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみのライター。女性セブン連載『いつも心にさざ波を!』も好評。64才。

取材・文/藤岡加奈子

※女性セブン2022年3月24日号

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