友人が皆で集まっているのを知ると疎外感も
居場所がマップ上に可視化されることを逆手にとって、特定の友人を孤立させる“いじめ”が起こる可能性もある。GPSアプリをインストールしているという関西に住む大学生のAさん(20歳)が語る。
「本音では一人でゆっくりしていたいと思っても、自分以外の友人たちが同じ場所で集まっていたら、やはり仲間はずれにされたような気持ちになります。最近では、いじめの方法も変化していると思う。たとえば、LINEグループに特定のメンバーを入れずにハブッたり、Instagramのストーリー機能で『親しい友人』のリストからハブることで、それが見えないメンバーの悪口を書く子がいました。
ただ、GPSアプリの場合は、居場所をあえて表示させることで、誘われていない子に孤立感を与えることもできる。その意味では、余計に自分以外の人間関係や、友人の動向が気になってしまう要因になっていると思います」(Aさん)
そうしたリスクを排除するためには、GPSアプリをインストールしなければ良さそうだが、人間関係を考えるとそうはいかない側面もあるようだ。大学入学を機に九州から関西に上京した女性・Bさん(21歳)はこう話す。
「地元の友人たちの多くが、大学受験をせずに地元で就職しています。私はそのコミュニティから逃げたくて、関西の大学を受験し、一人暮らしをはじめました。しかし、成人式で帰省した際に中学時代の“陽キャ”グループから、GPSアプリを入れるよう促されました。
彼らは、悪気なく地元のつながりが“良いもの”だと思い込んで、それを押し付けてきます。せっかく地元から離れたのに、また地元の人間関係に引き戻されたようで苦しい気持ちはありますね」(Bさん)
GPSアプリを利用している若い世代からは、少なからず「疲れる」、「断りづらい」という声が聞こえてくる。友人グループから排除はされたくないが、そこに包摂されることもまた人間関係の疲労につながる。GPSアプリの普及によって、こうしたジレンマに直面している人たちも少なくないようだ。